制作工程

花祭窯・藤吉憲典の磁器の制作工程と、使っている材料について紹介いたします。同じ肥前磁器でも、窯元や作家によって異なる部分もたくさんあるので、あくまでも「藤吉憲典の場合」としてご理解ください。

また、常に材料・方法を試し、研究しながら制作しているため、今後多少変更する場合もありえます。


材料

陶土やさん、絵具やさん、釉薬やさん、筆やさんなど、やきものに必要な材料や道具は、佐賀有田周辺の専門業者さんから仕入れをしています。江戸時代から続く産地の強みと、専門知識の幅広さ、プロ意識の高さを信頼しています。独立する前の窯元勤め時代から現在まで、約四半世紀のお取引先も少なくありません。

天草陶石(あまくさとうせき)

熊本県の天草で取れる陶石です。ロクロがひける状態のものを一般に「陶土」と呼んでいますが、正確には土ではなく、石を砕いたものです。精製方法により、いくつもの種類があります。理想とする器の生地の雰囲気を出すために、陶土の種類と釉薬の種類の組み合わせ、窯の炊き方など、さまざまな条件の組み合わせを試し、研究しながらつくっています。

(一言メモ)肥前磁器といえば、江戸時代、佐賀有田の泉山の陶石で始まりましたが、良質の陶石はその時代にほとんど掘りつくされてしまい、現在では一般的には流通していません。現在では有田でつくられるやきもののほとんどが、天草陶石を原料とするものです。

唐呉須(とうごす)

コバルトを主原料とした下絵付の絵具です。染付(そめつけ)の青色を出します。もとは天然の顔料ですが、現在は天然の唐呉須はほとんど手に入らないため、化学合成されたものになります。呉須もまた、構成成分の割合によりさまざまな種類があります。また、陶土・釉薬・焼成方法などの条件の組み合わせによって、同じ呉須を使っても、青の発色は大きく変わってきます。

釉薬(ゆうやく)

釉薬もたくさんの種類があります。磁器の表面にかかっているガラス質が、釉薬です。柞灰釉(ゆすばいゆう)を使っています。柞の木から作った木灰を原料とした釉薬ですが、現在は国内原料がほとんど無いといわれており、釉薬の専門家がつくる合成柞灰釉を使っています。性質がやや不安定で、呉須との相性や窯の焚き方に左右されやすい釉薬ですが、独特のやわらかい肌合いを出すことができます。

(一言メモ)釉薬を自分でつくる方もおられます。土ものを薪窯で焚く場合などは、窯のなかで灰がかぶることによる自然な釉薬が生み出すさまざまな表情が見どころになったりします。逆に有田等の磁器の産地では、安定して真白く焼きあがる石灰釉(せっかいゆう)を使うところが多いです。

上絵の具・金釉

上絵・赤絵と呼ばれる絵付の顔料です。粉上の顔料を乳鉢ですり潰し、水に溶いて絵の具にします。色の種類が多く「赤」ひとつとっても多様です。佐賀・有田には江戸時代から続く絵具やさんがあります。


工程

佐賀有田の磁器制作は、細分化された分業体制が現代もなお続いています。藤吉憲典は、それらの工程を一人でやっています。

土こね

有田には「土こね三年」という言葉があります。仕事の基本である「土こね」を一人前にできるようになるには三年かかるという意味で、ひとつひとつの工程の大切さを感じさせます。

成形

形を作る方法には、ロクロを使う方法、「たたら」という板状の土を張り合わせて作る方法などがあります。またそれらに装飾として彫塑・彫刻を施す場合もあります。

削り

成形したものを、さらに美しく無駄のない形に仕上げる工程が「削り」です。成形の際に出来るだけ削る部分が少なくて済むようにつくりあげるのが、腕の見せ所です。

素焼き

素焼きは最初の焼成です。現在使っている電気窯では、9時間程度かけています。最高温度は900度ぐらいまで上げています。

下絵付

素焼きからあがった生地を拭きあげたあと、呉須(ごす)という絵の具で絵付をしていきます。これが染付の青色になります。絵付の際は、下書きをせずに直接筆で描くことで、生きた線を描くことができます。

施釉

絵付の済んだものに釉薬をかけます。釉薬が濃くかかるか薄くかかるかによっても、染付の青の発色が変わってくるため、濃度への感覚と繊細な技術が必要とされます。

本窯

おおよそ24時間から25時間かけて、最高温度を1300度近くまで上げていきます。途中でガスを入れながら還元焼成をかけます。電気窯では、時間と温度を管理するプログラムが組み込まれていますが、その日の気象状況によっても影響があるため、約1時間おきに温度の上がり具合や窯の内部の様子を確認しながらグラフをつけていきます。

上絵付

赤絵・染錦の文様が入るものは、上絵付を施します。粉状の顔料をよくすりつぶし、水で溶いて絵具にします。絵具の状態の色は、窯に入って焼きあがった後の色と異なるため、出来上がりの彩色イメージをしっかり持って色を選ぶセンスが求められます。また焼成する前は手で触ると消えてしまうので、広い範囲に赤絵を施す際には、途中で数回赤絵窯に入れて焼きつけて落ちないようにしながら絵付を完成させることもあります。

赤絵窯

6時間から7時間かけて780度まで温度を上げていきます。絵具の種類により気化する温度が異なり、金彩やプラチナ彩を施す際には、より低い温度での焼成となります。

仕上げ

本窯も赤絵窯も、火を止めたあとじゅうぶんに温度が下がってから窯を開けます。温度が高い状態で窯を開けると「冷め割れ」で割れてしまうことがあるからです。窯から上がったら、底面を紙やすりで滑らかに仕上げて出来上がりです。特に食器の場合、底面の仕上げをきちんとすることで、塗りの盆や木製テーブル等に傷がつくことを防ぎます。

 

肥前陶磁の価値を高める仕事をし 肥前陶磁の伝統技術・文化を後世へ伝える